葉酸とビオチンはどちらもビタミンB群の仲間です。そもそもビオチンとは、D-(+)-cis-ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-チエノ-(3,4)-イミダゾール-4-吉草酸のことです。ビタミンB群に分類される水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB7とも呼ばれますが、欠乏症を起こすことはまれです。1935年、オランダのケーグルによって卵黄中から発見されました。酵母の増殖に必要な因子であるビオス の1成分として研究されたためにこの名がつきました。古くには、マウスを用いた動物実験において、生卵白の大量投与によって皮膚に生じる炎症を防止する因子として発見されたことから、ビタミンHと呼ばれたこともあります。また、生体内において果たす役割から補酵素Rと呼ばれることもあります。一日の摂取目安量は、成人で45μg。腸内細菌叢により供給されるため、通常の食生活において欠乏症は発生しません。多く含む食材には酵母、レバー、豆類、卵黄などがあります。しかし国内で未だ知名度の低いビオチンは日本食品成分表に掲載されておらず、その摂取基準が曖昧です。第六次改定・日本人の栄養所要量によれば、成人男女の基準は30μgです。ビオチンの利用効率は食品によりかなり異なり、特に、小麦中のビオチンはほとんど利用されません。摂取過剰による障害は知られておりません。抗生物質の服用により腸内細菌叢に変調をきたすと欠乏症を示すことがあります。また、ビオチンは卵白中に含まれる糖蛋白質の一種、アビジンと非常に強く結合し、その吸収が阻害されるため、生卵白の大量摂取によっても欠乏症を生じることがあります。この場合のビオチン欠乏症を特に卵白障害と呼びます。1日あたり10個以上の生卵を食用し続けると卵白障害に陥る可能性があります。欠乏症状としては、白髪、脱毛、湿疹あるいは炎症など皮膚症状、皮膚や粘膜の灰色退色や落屑、結膜炎、筋肉痛、疲労感、食欲不振、味覚異常、血糖値上昇、不眠、神経障害などがあります。また妊娠中、ビオチンの欠乏状態に陥った母体の胎児に、高い確率で奇形が誘発されることが報告されています。その主なものとしては、口蓋裂、小顎症、短肢症などです。しかし、その詳細なメカニズム等に関してはほとんど明らかにされておりません。卵に含まれるタンパク質アビジンは、ビオチンを非常に強く結合するために標的分子にビオチンを結合して目印とし、これをアビジンで検出する方法が用いられています。生化学の研究用試薬、あるいは癌などの検査用試薬、モノクローナル抗体と制癌剤を結びつけ、癌細胞のみを直撃するミサイル療法製剤への適用など応用されています。
